整骨院・接骨院で患者を施術することだけが、柔道整復師の道ではありません。柔道整復術に関する知識や技術、臨床経験を活かして、他の働き方を見つけることもできます。そのひとつが介護業界での需要が高まっている「機能訓練指導員」です。そこで、機能訓練指導員の概要や現状、柔道整復師との関連性など詳しく解説していきます。
目次
機能訓練指導員はどんな職業?

機能訓練指導員は何をする仕事なのか、なぜ需要が高まっているのかなど、まずは概要について説明していきます。
機能訓練指導員とは、リハビリや機能訓練のサポートをする職種
「機能訓練指導員」は、介護施設などを利用している方に対し、それぞれの状況に合わせてリハビリや機能訓練を行い、できるだけ自立した生活を送れるようサポートする職種です。利用者の心身機能評価・機能訓練計画書の作成・各関係者との話し合いなど、幅広くサポートを行います。
超高齢化社会によって需要は上がっている
現在、日本の高齢化率は28.4%と世界最高の割合を示しており、高齢化社会・高齢社会を超える「超高齢社会」に突入している状況です。それに伴い、機能訓練指導員という職種もますます需要が上がっています。機能訓練指導員が増えれば、より多くの高齢者が健康的な自立した生活を送れるようになるため、社会貢献の観点から見ても重要な役割を持っている職種です。
高齢化率は下がるどころか今後も上昇する傾向にあるので、機能訓練指導員も引き続き高い需要が見込めるでしょう。
柔道整復師の資格があれば機能訓練指導員になることも可能
機能訓練指導員になりたいなら、特定の国家資格が必要です。
機能訓練指導員になれるのは、8つの国家資格保持者
機能訓練指導員の要件を満たす国家資格は、柔道整復師を含めた以下の8つです。
・柔道整復師
柔道整復術を使って、骨や筋肉に関する怪我の治療を行います。
・看護師、准看護師
医療知識を活かして、利用者の健康管理や病気の予防を行います。
・理学療法士
日常生活に欠かせない基本動作のリハビリを行って、運動機能を改善します。
・作業療法士
入浴や食事といった応用動作のリハビリや、レクリエーションによる心身のケアを行います。
・言語聴覚士
言語訓練によるコミュニケーション機能回復や、嚥下障害・口腔機能のケアを行います。
・あん摩マッサージ指圧師
マッサージや指圧を用いて、身体の疲労やコリを改善します。
・鍼灸師
鍼と灸を用いて、身体の痛みやストレスを改善します。機能訓練指導員の人手不足により、平成30年から鍼灸師の国家資格も要件に追加されました。ただし、鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍する施設にて、半年以上の実務経験を積む必要があります。
持っている資格によって、仕事内容は異なる
上記の国家資格を一つでも取得すれば、機能訓練指導員になることが可能です。しかし、資格の種類によってスキルや専門分野が異なるため、仕事内容も変わってきます。
柔道整復師の場合、柔道整復術のスキルを活かし、骨折や脱臼によって低下した身体機能を回復することが主な役割です。また、整骨院・接骨院での実務経験があれば、高齢者に対するケアにも精通していることが多いため、特に介護施設で重宝されています。
機能訓練指導員はキツイ?仕事内容と職場環境
機能訓練指導員は将来性の高い職種ですが、良い点ばかりではありません。具体的な仕事内容や職場環境、キツイ面の有無などについても知っておきたいところです。
機能訓練指導員の仕事内容
柔道整復師として機能訓練指導員になる場合、介護(予防目的)の仕事がほとんどです。そのため、整骨院・接骨院で働いている時のような治療はできません。急な怪我に対する応急処置は行いますが、あくまで機能回復や運動指導に関する仕事がメインです。場合によっては、車の送迎などを行う必要もあります。
実際、デイサービス施設で働いている柔道整復師を見てみると、施術者というよりスポーツトレーナーに近い仕事内容です。歩行や階段昇降といった運動機能の訓練を行ったり、トレーニングマシンによる運動指導を行ったりします。また、利用者のバイタルチェックやレクリエーション活動など、他にも幅広い仕事に携わっているようです。
機能訓練指導員が働く職場環境は?
機能訓練指導員は現状、介護福祉施設や要介護者向け医療施設で多く見られます。特にデイサービス施設や特別養護老人ホームを運営するにあたり、機能訓練指導員を1名以上配置することが義務付けられているため、それに関する求人も増えているようです。
介護の現場は慢性的な人手不足が続いているため、機能訓練指導員を目指すにあたり、やはり「残業」は気になります。小さな施設だと人員も少ない分、仕事量も増えて残業が発生しやすいようです。また、ケアマネージャーへの提出物があって、早く帰れないという声も挙がっています。
なるべく残業を抑えたいなら、人員が揃っている大きな施設に就職するか、パート勤務などで働くことを検討しましょう。
機能訓練指導員になればケアマネージャーの道も開く
超高齢社会を迎えている日本では、運動指導や高齢者のケアに強いといった点から、柔整業界においても機能訓練指導員が注目を集めています。実際、需要も高まっているため、柔道整復師を目指している人なら検討する価値大です。また、機能訓練指導員として実務経験を積み重ねれば、より統括的な仕事を行うケアマネージャーになることもできます。負うべき責任は大きくなりますが、給与や待遇は良くなるため、キャリアアップを考えている人にもオススメです。