2011年一人の治療家の卵が整骨院に就職した。男の名前は竹本英毅。元陸上部のキャプテンで真面目一筋の熱い性格。
「就職先は結構考えますね。元の職場ではなんか師匠と弟子っていう関係だったんで、給料うんぬんじゃなくて技術を教えてもらっている感じでした」
だがその労働環境は想像を超えるものだった。
「朝は7時30分ぐらいに出勤して、帰りが先輩が帰るまで帰れないんで、だいたい10時半とか遅い日だったら日付が変わることもあります」
生活が苦しく、食べていくのがやっとで休日も外に出られなかった。
「初任給が当時は8万。休みの日に掃除しに出勤させられたりとか」
だが、もっとつらかったのは上司や同僚との人間関係。
「職場で軟膏とか塗って手が汚れると、タオルを使って手をふくんですけど、タオルが汚れてるのはお前のせいだと上司に言われて。自腹切ってタオルを買いに行かされたりしましたね」
上司に機嫌次第で怒られ、同僚も患者の前で正座させられるなど、職場の雰囲気は最悪。
「結局終わってからのなんてない時間に出るのも愚痴が多いので、自分も裏ではそんなこと言われているのかなって思っていました。本音では話し合えなかったですね」
先輩方を尊敬して入った職場。だが、心が折れそうになっても頼れる人は誰もいない。そんなある日、
「家に帰ってもすごい疲れた顔してるし、妻が無理しなくていいよって言ってくれました」
胸が熱くなった。自分は家族にどんな背中を見せてきたんだろう。そして悩んだ末、転職を決心した。
「でも不安しかなかったですね。やっぱり結局どこの整骨院も同じなんだろうなという思いがあったので」
そんな時、ある求人が目に入った。その名はサンキューグループ。全国に30以上の店舗を展開し、治療技術、働く環境の良さ共に業界トップクラス。
「他とは違うんだろうなというのを感じ、そこに賭けてみました」
期待を胸に面接を受けると、見事合格した。けれど手放しでは喜べなかった。
「入社して先輩が自分より年下だった時に、やっぱり先輩の先生は気を遣うだろうなと。自分自身も年下の先生に教えてもらうのは、どんな思いをするのだろうかという不安がありましたね」
初日、緊張を胸に出社すると、
「出社して何をしていいかわからないときに、先生が握手で迎えてくれたんですよね。自分を認めてくれる感じ、立ててくれる感じがとても嬉しかったんです。それに比べて自分は何を考えてたんやろうなって」
さらに驚いたのはその待遇。
「帰宅時間が決まっているので、残業はなし。夜の8時30分完全退社。妻からすれば、もう帰ってきたの?っていうぐらい」
給料は以前の倍以上になった。何よりうれしかったのは、スタッフとの人間関係。
「みんなが褒めあえるような関係。褒めた上で更にアドバイスしてくださるから、もっと頑張ろう!って思えるようになります」
仕事に行くのが楽しくて仕方なかった。社会人になって初めて仲間に出会えたと思った。
「スタッフ同士のコミュニケーションが多いので、仲間というか1つのチームっていう感じですね」
そして、そのわずか1年半後に院長に抜擢された。
「誰にでもチャンスはあるんだなと思いました」
気付いたらかつて陸上部でキャプテンとして仲間と共に戦っていた時の自分に戻っていた。
「諦めるなって言いたいですね。絶対見てくれている人はいるし、ちゃんとしている職場はあるし。サンキューに入ってよかったです」
人生は何度も挑戦できる。竹本はここサンキューで2度目のスタートを切ったばかりだ。